2015年12月12日(土)、”Re-designing and Re-marketing Start-ups!!” をテーマとしたイベント、HEART CATCH 2015 が開催されました。その模様をレポートします。
スタートアップが世界水準のクオリティのサービスとプロダクトを生み出すためには、「デザイン」と「マーケティング」が必要不可欠。このイベントは、選ばれし5社のスタートアップに対して、プロのデザイナーとマーケティングプロフェッショナルが2ヶ月間メンタリングした結果を、[BEFORE & AFTER] 形式で紹介するものです。注目度は高く、申込は満員御礼。当日も立ち見が出る盛況ぶりでした。
会場は天王洲アイルの寺田倉庫。エレベーターで5Fの会場に上がると、クールな音楽に包まれたとても素敵な空間がありました。まるで海外にあるイベントスペースかのようでした。
イベントオリジナルのTEAS' TEAも。
このプログラムの特徴は、なによりまず豪華なメンタリング陣にあります。スタートアップがいざ世界に勝負に出ようという時に、知見と実績をあわせもったデザインとマーケティングのプロフェッショナルによるメンタリングが受けられることは、非常に大きなチャンスだと思います。これをやりたい!こんなサービスをリリースしたい!というスタートアップと共に寄り添いブラッシュアップに費やした2ヶ月間により、例えばUI/UXなど目に見えるデザインの改善にとどまらず、デザインを広義にとらえて事業の選択肢と可能性が生み出されたのではないでしょうか。
デザインと経営・デザインとマーケティングの関係性
それを象徴したトークが、最初のキーノートパネルでした。
グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮さん、takram design engineering 田川さん、IDEO Tokyo 野々村さんが登壇し、「Design with a Big “D” デザインと経営」と題しておこなわれたこのキーノートパネルでは、デザインとは単なるプロダクトデザインやクリエイティブにとどまらないものであるという3人の意見が交わされました。
日本で一般的に言われる「デザイン」と、ここでいう「デザイン」の定義の違いについて
- 野々村さん: デザインはデザイン、ビジネスはビジネスパーソンのものといった価値観を崩すもので、違うバックグラウンドの人間がみんなで作り上げて行いくもの
- 田川さん: 分業で成立するものではない。マーケティング的価値とクリエイティブ的価値両方を持ち合わせている必要がある。統合志向としてデザインスキルを活用する人が日本でも増えていかなくてはいけない。
- 高宮さん: 組織や役割を横断した横串感がある一方で、現場現場で最適化を図るのではなく、経営レベルで統合していく動きがありそう
デザインと経営との関係について
- 田川さん: 自分たちが作るものを最終的に使う人がコンシューマーであれば、それはプロダクトと捉えられる。プロダクトが良くないのに成功するケースはほとんどないと思う。プロダクトが強くて、そのポテンシャルをマキシマイズするのが経営なのでは。
- 野々村さん: 経営戦略とデザイン戦略は同じだと思っている。経営もデザインも正解がないが、その中で作り上げて成功に導いていくもの。仮説を立てて進めていく点では共通している。
マーケティングとデザインとの関係について。どのように両立させていくべきか?
- 田川さん: 同時スタートしかないと思う。マーケティング>デザインのプロセスでは、マーケティングにフィットした狭い的を狙ってプロダクトを作る必要があることも。理想と現実を落とし合うプロセスをかなり上流でやっていった方が良い。プロトタイプ志向で早いスピンを小さなチームで回してみることが良い。
- 野々村さん: 一般的に組織横断型と言いつつリレー形式の仕事となることが多い。モノを売るという行為はそれをどう伝えるかということ。従来型のマーケティング手法(プロダクトデザインに関わらず予算を費やしてプロモーションに頼る行為)が通じにくくなった今、モノを作るところから見直していかなくてはいけない。
- 高宮さん: マーケット・インとプロダクト・アウトどちらから?という思考ではなく、それを行ったり来たりするという理解。
これからのデザイナーに求められるスキルは?
- 野々村さん: コラボレーションしていくこと。絶対一緒にやった方が楽しい。インプットの質が上がるので、アウトプットの質も高まる。ビジネスとクリエイティブを分ける必要はない。
- 田川さん: 垂直軸に深掘りしたデザイン力は強烈である。垂直軸での深さと水平軸での幅広さを両方リスペクトする態度が、デザイナーやそれを取り巻く職種には必要。水平軸と垂直軸のバランスについては、個人的には垂直軸の深さを持っていないと、どこかで行き詰まるように思う。
スタートアップへはどう展開していくのが良いか?
- 野々村さん: スモールウィンをどう作るか。アーリーフェーズでどんどんユーザーにぶつけて磨いていって欲しい。モチベーションも上がるし、ユーザーとのインタラクション/エクスペリエンスを見落とさないようにもなるので、重要だと思う。
- 田川さん: ユーザーセントリックなアプローチを保ちつつ、その企業のコアな部分をいかに掛け合わせていくか。企業のコア部分をどう光り輝かせていくかという視点との掛け合わせが大事。企業のミッションやコアバリューを、プロダクトを見ながら磨き続けられるか、また、ゆずれない部分をどうプロダクトにビルトインしていくかを、できるだけ早いステージで回し続けること
3人とも共通して、デザインとは単なるプロダクトデザインにとどまらないものであり、企業経営やマーケティング同じフェーズかつ同時並行に考えられるべきであるという意見でした。
メンタリングプログラムによる成果発表
2ヶ月間のメンタリングを経て、以下の5つのスタートアップの発表が行われました。プログラム開始前の悩みや課題感が動画でまず流され、その後スタートアップが2ヶ月間を通して変化したことをを中心にプレゼンをおこない、その後メンタリングを担当したマーケター・デザイナーの方々が登場し、この2ヶ月の成果を振り返るというもの。
「データで見えない真の価値を発見し具現化するマーケティングとデザイン」mana.bo (mana.bo inc.)
「技術がプロダクトに変わるとき~ユーザーを考え抜くことで見えてきた睡眠サポートのカタチ」nemee (NeuroSpace inc.)
「排泄予知が変える未来 - ユースケースの重要性 -」D free (Triple W)
「Redefining core technology through user’s eye.」Quiver (Puteko Ltd.)
「テクノロジーとユーザーを結ぶ価値観が、人類の未来を変えていく」HOTARU (Hotaru Co.)
※撮影NG
各セッション学びが多く、参加したからこそ感じられる雰囲気や思いがありました。半日の間ずっと熱量を保ち続けた、とても発見の多いイベントでした!
*HEART CATCH 2015は、イベントレジストをご利用いただいています。イベントレジストの詳しい資料はこちらからダウンロードできます。