2017年2月15日(水)に虎ノ門ヒルズにて、一般社団法at Will Work主催、働き方を考えるカンファレンス2017「働く、生きる、そして」が開催されました。
これからの働き方を考えるカンファレンス
"人と企業の「これからの働き方」や「理想の働き方」を考え、実現する” を目的に、民官様々な登壇者により幅広いパネルディスカッションで構成された今回のカンファレンス。一般社団法人at Will Work 代表理事 藤本あゆみ氏による冒頭あいさつによると、at Will Workは、「働き方」を選択できる社会の実現に向けて活動を行うために立ち上げた団体であり、ロゴの意味も、四角一つ一つに違う人、数式も様々で、新しいものが生まれてくる世界を表現しているとのこと。いまから10年前に、スティーブ ジョブスがiPhoneを発表し世界が変わったように、Gmailで、どこからでもメールを見ることができる世界になったように、10年先の全く景色の違う世界に向けて早くから準備するために、これからの働き方の未来、多様化する未来を一緒に考えるカンファレンスにしたいという熱い思いを伝えました。
またこのカンファレンスでは、グラフィックレコードがおこなわれることも共有されました。冒頭あいさつのグラフィックレコードは、以下。
とても直感的でわかりやすいですね。このようなグラフィックレコードが、セッションが終わるたびごとにどんどん追加されていき、セッションを振り返ったり、参加できなかったセッションの様子を垣間見たりすることができました。
公開インタビュー形式のキーノート
キーノートは、3つの公開インタビュー形式でした。まず最初のインタビューには、ロート製薬株式会社 代表取締役社長兼COO 吉野 俊昭氏を迎え、インタビュアーは、フォーブス ジャパン 副編集長 兼 WEB 編集長 谷本 有香氏が登場。
まず、谷本氏が、昨年メディアでも多く取り上げられた副業制度について質問をしました。
吉野氏は、自身が営業からマーケティングに移った際に、非常に大きな学びがあった経験から、社員一人一人が学びチャレンジできる環境が会社の成長に不可欠であり、さらに社内だけでなく、社外に飛び出して経験を積むことが、結果社内へ刺激を与えることになるのではないか?との想いでこの制度がスタートしたことを説明。現在は、社外兼業を実行しているのは20名ほど、社内のダブルジョブについては、30名ほどが本人希望によるジョブローテーションを行っているそうです。応募者も実際は若者からの応募ばかりかなと思っていたら、意外に勤続年数関係なく幅広くバランスよく応募があったと語りました。
人材流出への懸念についての質問に関しては、その人がほかの場でより活躍できるのであれば、自社を卒業することもありではないか?という考えでおり、そうした心配より、全体メリットの方が大きいことは間違いなく、副業を行う人間は、本当にイキイキ働いている人が多い。とのこと。
部門間の壁を取り払うために、社内副業の制度は非常に役に立つと考えていると、新しい環境で刺激をもらい、広い視野を持つことができるメリットを強調していたことが印象的でした。
次は、Sansan株式会社 CWO (Chief WorkStyle Officer) 角川 素久氏を迎え、インタビュワーは、藤本あゆみ氏。
Sansanでは6年半前から徳島の民家を借りて、サテライトオフィスを運営しているが、なぜこのような取り込みを行ったか?の質問に対して、角川氏は次のように説明しました。「福利厚生でもなく、あくまで働く場所として民家を借りている。生産性向上だけでなく、”ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する” を会社のミッションとして掲げている会社として、象徴としても継続している」。
大きすぎる目標や改革を目指しすぎるのではなく、目標はシンプルにできるところから始めることがよいと、ほかの企業が参考にする場合のポイントを述べました。Sansanによる約1,000人を対象にしたWEB自社調査によれば、83.3%の人が働き方改革は必要だと思っているが、65.5%がまだ取り組めていないそうです。理由は、経営者が取り組む必要性を感じていない。(と、感じている?)が理由の1位になっているとのこと。また、「働き方改革の施策により、業務に支障が出ている」と答えている人が42%に上り、「帰宅後のサービス残業が増えた」という理由が45.8%となり、88.3%の人が「労働時間の削減には生産性の向上が不可欠と感じている」と回答したことも共有されました。
3人目は、INSEADERS VC(シンガポール)パートナーで、『最強の働き方』『一流の育て方』著者の Moogwi Kim(ムーギー・キム)氏。インタビュワーは、朝日新聞社 総合プロデュース室プロデューサー 浜田 敬子氏が登場。
インタビューの中で特にムーギー氏が強調していたのは、自分が好きで、自分が得意な仕事を自分で選ぶことが何より重要…という、一見当たり前なことであるものの、企業側も求職者側も、マッチング精度を高める努力をしきれていないという点でした。
求職者側に関しては、そもそも幼少期からやりたいことに向かっている行動の繰り返しにより主体性が育てられるが、日本の教育システムでは上からやるべきこと、価値観を押し付けられるので、若者が主体的に仕事を選べないと指摘。自分の好きなことを探求させ伸ばすことを重要視した教育改革の必要性を強調しました。
また、パラレルキャリアの重要性は必然であるという話も。シンガポールで氏が経営している会社が、グーグルやIBMでトレーニングを受けた優秀なエンジニアをパートタイムで安価で雇えていることを事例にあげ、パラレルキャリアが許されるからこそ、ベンチャー企業は一流のエンジニアをパートタイムで安価に雇えると紹介。逆に大企業も、スタートアップでのエクスターンシップを認めることで、イノベーション創出の機会を増やそうとしていると海外の事例を紹介しました。
また、生産性を向上させるためには3つのポイントがあるという話も。1つめは、セッションの中で何度も協調していた、好きな仕事とのマッチングの制度を高めること。2つめは、現実問題、上司が生産性のボトルネックになっているケースが実は多いため、非効率な管理職の再検討を推奨。3つめは、優秀な人ほど、その人の人生にとって与えられている仕事の「意味」を考えるので、会社側は副業を奨励したり、転職しても戻って来ることができる環境などを与えることが、結果的に優秀な人材が集まってくる魅力的な職場となるとアドバイスしました。
トークセッション「最後のドミノはいつ倒れるのか」
キーノートセッションに続き、トークセッション「最後のドミノはいつ倒れるのか」が行われました。モデレーターにハフィントンポスト 日本版編集長 竹下 隆一郎氏を迎え、スサンナ マケラ氏(日本マイクロソフト株式会社 執行役員 政策渉外・法務本部長)、尾崎えり子氏(株式会社新閃力 代表取締役社長)、萩原 牧子氏(株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 主任研究員/主任アナリスト)によるパネルディスカッションとなりました。
竹下氏は、昨年、匿名のブログで話題となった日本死ね。問題から1年。社会はその後、何が変わったか?を考えるために、実践的に取り組まれている具体例についてお話を伺える方々を迎えたと登壇者を紹介しました。
萩原氏から、日本最大級の働き方に関する調査から、テレワークに関する集計結果の報告で話題はスタート。働く場所が選べた方が仕事満足度も生活満足度も高くなり、自己啓発をする人も多くなるが、男性の場合は転職意向も高くなる傾向を共有しました。
マケラ氏によると、マイクロソフトではテレワークを推奨しており、スカイプを使ったバーチャルミーティングはよく行っているが、テレワークを支えるテクノロジーの進化も進むはずであるとのこと。重要なポイントは、会社と社員の「信頼」という原則であることも強調しました。規制やガイドラインではあまりうまくいかないが、フレームワークが重要で、日本はその点は整っていると考えており、多様な人種で働く文化の違いについてマイクロソフトでは、お互いに尊重するという文化が根付いているそうです。この課題を考えることは、日本の子供たち、将来のために、どんな世界にすることが理想かを考えることが重要、と大きな視点を持つ重要性についても語りました。
尾崎氏は、テレワークの教育プログラムで重要なのは、ツールやテクニックだけの話ではなく、サテライトオフィスの設置はオンとオフの切り替えや評価のために一つの解決案ではある、変革は楽しいものでワクワクしながら行うことが重要であるとも語りました。
テクノロジーにより働き方はどう変わるのか?
LUNCH SESSIONでは、テクノロジーが働き方にどのような影響をもたらすのか、どう変化していくのか、そのスピードなどについて、株式会社メタップス 代表取締役 佐藤航陽氏と ヤフー株式会社 チーフストラテジーオフィサー 安宅和人氏が登壇。壇上も客席もランチを食べながらのリラックスしたムードでセッションは進行していきました。
世界的に人口減少が起き、貨幣価値や会社の意味などにも大きな変革が訪れようとしている中で、我々はどのように対応していくべきか?
佐藤氏は、新しい価値観の一つの考え方として、今後AIなどに仕事を任せられるようになった時、人々は人の話を聞く、会う、歌を聞く、感動する、など「体験」の価値、例えば、エンターティメント性の高い分野などにヒントがあると語りました。
例として、いま中国では、動画で注目を浴びて「投げ銭」で高収入を得ている人々が増えてきていることや、今後、会社組織という形態自体が残っていくのものか?という課題にも向き合うべきであると語り、たとえばビットコインのように、数人もしくは一人で作り上げたプラットフォームに、民衆が利用することにより成長するような経済圏が生まれると、会社ではないものが大きな経済を生むことができるようになる可能性が高まり、企業の価値と雇用を生み出す価値が必ずしも一致しないケースも出てきていると語りました。
一方、安宅氏は、確かに人間の仕事は、感じること、決めること、伝えることに集中する可能性が高いので、個性、キャラが立ってくることが重要であり、人間ひとりひとりの普通ではない部分、際立った部分などにも注目すると興味深いとコメント。一方、感謝がお金に変わるものが仕事であり、社会をより良くする存在としての会社はあり続けるべき、と希望も込めて語りました。
安宅氏は、とはいえこれから大きな変化が起こることは間違いないため、その準備は必要としながら、「日本は歴史上、何度も大きな変化に直面し、乗り越えてきており、我々はその子孫。これから一回灰になるかもしれないが、戻せる。大丈夫。我々はやれる子の子孫ですから。」と希望のメッセージを送りました。
会社はよく、「ヒト、モノ、カネ」と言われるが、今後はこれに加えて「データとAI/Roboticsのようなキカイ」がどの分野でも重要になるので、ITC(information, communication, and technology) に個人も会社も投資していくことが、技術者でなくともサバイブし続けられるヒントになると語りました。
日本人は本当に働き過ぎているのか?
SPECIAL SESSIONは、「日本人は本当に働き過ぎているのか?」をテーマに浜田 敬子氏(朝日新聞社 総合プロデュース室プロデューサー)のモデレートで、竹中平蔵氏(慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授)、白河桃子氏(少子化ジャーナリスト・作家・相模女子大学客員教授・昭和女子大女性文化研究所客員研究員)、小口日出彦氏(株式会社パースペクティブ・メディア 代表取締役)西村創一郎氏(株式会社HARES 代表取締役)氏のパネルディスカッション形式で実施されました。
セッションは、浜田氏の「多様な柔軟な働き方を選べる人と選べない人がいる。企業が終身雇用、年功序列を前提とした制度を維持する中で、本当に柔軟な働き方を選択可能なのか?」という投げかけからスタートしました。
竹中氏は、「終身雇用、年功序列は戦後できた考え方で、日本的だと思われるが実はそうではない。若い人を教育すれば経済成長できるという環境下で採用された制度であって、現実は実はそうなっていない」と、一般的なイメージと現実には乖離があると語りました。
その上で、「働き方改革の議論においては、政策議論と個人の議論を分けることが重要。個人の働き方の選択の是非を議論するよりも、多様な人がいることを前提とした制度を作るべきである」と、指摘しました。また、制度を考える上では、原理原則を守る必要があるとの見解も示しました。制度を再構築していく上では、雇う側の力が強い前提で、雇われる側の権利が守られるようにすること、雇用形態などによって差別がないようにすることが肝要だと言いいます。時間で働く職種に対しては、健康管理にも留意した制限がっ必要であるものの、ホワイトカラーの中では時間で管理しいくい職種については、残業というコンセプトそのものがないということを浸透させる必要があると語りました。
それを受けて、白河氏は、働き方改革実現会議では、ホワイトカラーエグゼンプションの議論はまだなされていないものの、ホワイトカラーの価値創出に対する報酬が少なすぎることを指摘しました。また、「長時間労働から成功体験を得ている年代は、時間を逆算して仕事をするという習慣がない」と指摘した上で、「時間を決めて、全力で仕事をし、生産性をあげることで、自己研鑽をする人が増えるようなサイクルを企業文化として育んでいくことが望ましい」と話しました。
小口氏は、「働き過ぎかどうかは『自分で判断する』ことだ。私たちが唱えている at Wil Work とは "自分の意志で働く" 、つまり自分で働き方を選ぶという意味です。多くの人が今いるところから動けないと感じてしまい、動けないと発想が止まってしまっているのではないか」と問題提起しました。また、可処分時間は労働時間が9時~17時になったら増えるものではなく、自分がこうしたいという意志が必要で、発想を無理やりでも変えていくことで、自分なりの働き方を見つける第一歩になると経験からの気付きを共有しました。
浜田氏からの「企業が文化を変えるのも、個人が発想を変えるのも難しいのではないか?」という質問に対しては、竹中氏は、「個人の働き方にコメントをするのはおせっかい」とした上で、「多様な働き方をする個人のボイスは多い方がよいものの、ボイスだけでは社会は変わらない。制度が変われば、変わる企業と変わらない企業に分かれ、その中から良い企業が出てくるというメカニズムに着目すべき」と応じました。また、制度の導入後の重要なポイントとして、事後的なチェックの仕組みを導入することの必要性にも言及しました。
個人が発想をかえるという視点からは、西村氏は、「成果さえ出せばワークスタイルは比較的自由な会社で働いてきたものの、子どもが3人いる中で毎日往復3時間かけて会社に通勤する働き方では、人生の設計が難しいと感じ、育児もしながら仕事もするという二兎を追って二兎を得る人生を選択しようと考えて独立を決めました」と語りました。また、「働き方をきちんとデザインすれば仕事の生産性があがる。今の働き方改革は、働かせ方改革になってしまっている。政府、企業だけでなく個人も変わるべき。個人が自分の意志で働き方を選べる状態を作ることが必要」と話しました。
小口氏は、「人生はしばしば予想通りに行かないものだが、ダメな自分でも構わない。もし、行き詰ったら人生観を変えればよい。暗いよりは明るい気持ちの方が良い。現安倍政権の政策運営の目的は日本の景色を明るく変えること。働き方改革もその中にある。」と話しました。
それぞれのスピーカーから、今後の働き方を考える上での視点についてコメントをいただきセッションは終了しました。
西村氏「バイアスをぶっ壊せ!というのがキーワード。長時間働けば成果が出て、労働時間を減らすと成果も減る、という固定概念(バイアス)を壊し、時間にとらわれない柔軟な働き方によって成果を出すための方法を模索することが今、求められているのではないか。」
小口氏「制度面では、劇的な変化は望めないものの、実態は急劇に変わっている。日本以外で働く人も増える中で、日本人の定義も難しい。制度や従来の取り組み方に縛られない中で、やっているうちに、新しい働き方が見つかってくるのではないか。」
白河氏「チェンジメーカーは、子供をもって働く女性。時間などの制約条件があるからこそ、そこからイノベーションが生まれることが期待できる。」
竹中氏「制度と人々のメンタリティの好循環を作っていく必要がある。個人の意識でいえば、残業するほど暇ではないという意識になっていくと良いのではないか。人生のこと、家族、友人、自分への投資など仕事以外に意識をむけていくと自分の働き方も見えてくるはず。制度については、社会人のリカレント教育と霞が関特区として国が取り組み、東京都が取り組み、その取り組みを波及させていくようなアプローチが望ましい。」
グラフィックレコードで振り返る、当日セッションの様子
他にも数多くの内容の濃いセッションが多く行われましたので、グラフィックレコードで紹介します。
スペシャルセッションの後におこなわれたブレイクアウトセッション。
テーマA:健康・学び
テーマB:採用・評価
テーマC:マネジメント
テーマD:働く時間と生産性
テーマE:働く環境・ワークスタイル
テーマF:理想の組織・働き方
CLOSING SESSION
ネットワーキングの様子
その他、イベントのハッシュタグ(#atwillwork)も積極的にアナウンスされていたので、そちらかも、盛り上がりを感じてみてください!
「働き方を考えるカンファレンス2017」のサポーターとして、EventRegist は、受付管理システムをご利用いただきました。こうしたカンファレンスの申込受付・決済や参加者管理を効率的に運用することができるEventRegistについて詳しく知りたい方は、ぜひお気軽に資料をダウンロードしてください。