新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけとして、マーケティングを目的とした各種イベントのオンライン化が進みました。オンラインイベントは、多くの人が気軽に参加・情報収集できる点から、イベントの手法として定着しつつありますが、その一方、”対面で会う機会”の価値創出はオンラインでの実現が難しいため、将来的には、参加ハードルを下げ、参加者の裾野を広げるオンラインのメリットと、参加者との特別なエンゲージを醸成する対面式のメリットを両立できるように、オンライン/オフライン併催のハイブリッドイベントが主流となることが想定されます。
イベントレジストでは、これまでいくつものハイブリッドイベントをご支援してまいりました。そのなかで得られた知見を、『コロナ禍におけるイベント開催で気をつけておくべきこと』としてまとめましたので、これからイベントを企画される方は、ぜひご一読ください。
イベント主催者、運営会社(スタッフ、会場)、参加者も含め、関係するすべての人が、主体的に感染を拡大させないためにできることを考え行動することや、行動しやすい環境を整えることはとても重要ですが、感染症対策や事前検査を入念に実施しても、ウイルスを防げないことがあることを想定しておく必要があります。
もし発熱者や陽性者がでたらどうするか?だれもが当事者となりえるからこそ、その場合の対応方法については、言語化した上で関係者全員が理解し、いざというときに行動に移せるよう、「イベント運営マニュアル」に盛り込むことが必要です。
■ イベント開催中における検温や消毒の実施方法を明確化
参加者や登壇者が来場した際の、検温や消毒の実施方法(だれが、どの場所で、どのように)を整えるとともに、主催者や運営スタッフ側の検温や消毒のルールを決めておくことが重要です。また、主催者が必要と判断する場合は、関係者に直前のPCR検査や抗原検査などの結果を提出してもらうことも、検討項目として挙げられます。
どの対策を、どのレベルまで行うか、コストにも影響がありますので、十分に議論してマニュアルに記載しておきましょう。
■ 来場するすべての人(参加者、登壇者、主催者、運営スタッフ)のソーシャルディスタンス確保の設計
自治体や省庁が発信する、イベントの開催制限(人数上限や収容率、チケット販売の取扱いなど)などのガイドラインや、イベント会場の利用ポリシーを確認した上で、イベント会場の全体図に、レイアウト(登壇ブース、参加者の座席、撮影機材、休憩所、登壇者控室、スタッフ控室など)を反映します。
その時点で、イベント当日に来場する人数を算出し、受付で混み合わないような導線の設計や、来場時間を分散化する工夫(チケットで集合時間を分けておくなど)、お手洗いや喫煙所、休憩スペースで、他の人との距離を適切に保つことを促す案内(掲示や足元のサインなど)などを、検討しましょう。
■ イベント開催中に発熱者が発生した場合のオペレーションを明確化
イベント参加者や、主催者・運営関係者に発熱者が発生した場合に、当事者への対応、関係者への連絡方法、エスカレーションフロー、その後のプラン、参加者へのアナウンスなどを、どのタイミングで、どの方法で、どの内容で行うのかなどを、具体的に検討します。急なオペレーション変更となっても、全体指揮、部分指揮、作業者と、指揮系統が正常に機能するように、適切な判断ができるメンバーを要所に配置するなど、人材配置も工夫しましょう。また、感染者が発生した際は、イベント会場設営や、イベント終了後の原状復帰などの進行に大きく影響するため、緊急時のオペレーションについては、イベント会場側の意向も確認しておきましょう。
イベント運営マニュアルの上記3項目について検討が進むと、必要な備品類や、販売するチケットの仕様、イベントキャンセルポリシーなどを含む契約面などが、各論に落ちてきます。
■ 必要な備品類
直前のタイミングでの手配では、必要量を確保できない可能性があります。備品類の必要な量の試算と確保は、なるべく早めに動きましょう。
(必要な備品の中には、会場側が貸し出してくれるものもあります)
必要な備品例:
・アルコールなどの消毒用消耗品
・アクリルパネルなどの飛沫感染防止備品
・検温グッズなど
■ 販売するチケットの仕様
オフラインイベントやハイブリッドイベントの場合、来場者用のチケットを用意する必要があります。
チケットをお申込みいただく段階で、運営側で取り決めた感染症対策への協力などに必要な許諾を得ることや、いざという場合の連絡手段の確保ができるように、考慮しておきましょう。
必要なチケットの要件例:
・受付での混雑を回避するため、受付時間を分けるなどの工夫が可能か
・感染症対策への協力や、会場でのルールを遵守することなどを、イベント参加の条件として必須とできるか
・感染者が発生した場合の連絡手段は確保できるか
また、申込者からのキャンセルを受け付ける運営方針をキャンセルポリシーとして定めておくと、問い合わせにスムーズに対応することができ、トラブルの防止にも繋がります。
※キャンセルポリシーの考え方は、下記ブログをご参照ください。
▶ 事前に決めておくと慌てない!イベントのキャンセルポリシー
■ 契約面で考慮しておくこと
例えば、イベント開催日の直前に、国や都道府県の決定により開催が中止となった場合や、開催当日に発熱者が出たことによりオペレーションが大きく変更となる場合などの、契約面についても、しっかり確認しておきましょう。イベント会場や運営機材の利用料など、費用に直結することが多いため、契約時に条件を確認しておくことが必要です。また、仮に発熱者が出た場合でも、当人が申告しなければその後の対応ができません。運営スタッフが『現場に迷惑をかけるかもしれない』と言い出しにくい雰囲気にならないよう、業務委託などの契約条件を明確にし、運営マニュアルで緊急時のオペレーションを事前に共有することで、安心してイベント運営に専念できる環境づくりと準備を進めましょう。
発熱者は、行政の指示に従い、適切に行動することが求められます。東京都内でのイベントであれば、東京都発熱相談センターに連絡して、その後の対応を相談することができます。医療機関を利用してのPCR検査結果が陽性であれば、イベント来場者全員への告知が必要となるため、できるだけ早いタイミングで検査を手配し、結果がわかり次第、イベントディレクターに連絡しましょう。
イベント会場で発熱者が出た場合、医療機関を利用してのPCR検査結果の把握には、最短でも半日はかかるため、陽性であるか否かに関わらず、緊急時のオペレーションで進行することが求められます。ハイブリッドイベントの場合、オンライン配信のみへの切り替えを行うこともできますが、登壇者や来場者への対応はどうするか、現場で混乱を起こさないためにも、運営マニュアルの緊急時の対応は精度を高めておく必要があります。いくつか重要なポイントをご紹介します。
■『発熱者が出たこと』の即時共有
イベントが複数日開催の場合、深夜など関係者が休憩時での事態発覚も想定されますが、どのタイミングであれ、判明した時点で素早い共有が必要となります。ただ、闇雲に共有しても混乱するだけなので、誰にどのレベルまで共有すべきなのか、緊急時のエスカレーションフローをまとめておきましょう。
※会場の管理者との連絡方法などを事前に確認しておきましょう。
■緊急時の対応への切り替え
『発熱者が出たこと』で、現場で陣頭指揮を取るイベントディレクターは、イベント運営方法や方針変更を余儀なくされます。変更後のプランを、イベント関係者だけでなく、登壇者やスポンサーにも即時共有し、その後の情報も随時アップデートすることが重要になります。例えば、登壇予定の登壇者が事態の報告を受けて、急遽、会場入りしないと判断した場合、対象のセッションを実施するか、実施する場合、登壇者ごとのオンライン登壇の通信環境や設備をどのように整えるかなど、オペレーションに大きな変更が入ることが想定されます。
イベント主催者・運営会社で発熱者の状況(検査結果など)を最後まで確認し、登壇者、スポンサーを含めた関係者に対して、報告を行うことが必要です。また、イベント終了後の撤収作業には、イベント開催期間に関わっていない企業や担当者も従事するため、発熱者が発生したことを事前に伝え、撤収時のオペレーションについて事前に確認を行ったうえで、実施することが重要です。
※本番中に発熱者が出た場合、イベント終了タイミングまでにPCR検査による結果が出ていないことも多いため、新規に業務を進行する方、継続して業務を進行する方への配慮が必要です。
コロナ禍におけるイベントを安全に、関係者が実施してよかったと思えるものにするためには、事前の検討をしっかり行い対策を行うことが必要です。検討時に上記のポイントが参考となりましたら幸いです。
なお、新型コロナウイルス感染症の状況などにつきましては、省庁・自治体の発表や報道などで最新の情報を入手していただき、ご検討いただけますようお願いします。
私たちイベントレジストは、BtoBマーケティングイベントの主催者からの意見を元に、日々オンラインのプラットフォームサービスを進化させています。また、イベントの運営支援を通じて、現場ノウハウを蓄積してきており、リアルイベントと主催者のことを深く理解しています。
リアルとデジタルに通じる私たちが、オンライン化・ハイブリッド化と、イベントの進化に伴って顕在化する課題を、主催者とともに解決していきます。