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何がハイブリッドイベントをドライブしたのか? ~パンデミックで変わるイベント業界~

イベントグローブ編集長の古谷です。日々海外のB2Bイベントのリサーチをしていますが、今回は最近増えているハイブリッドイベントについてのお話しです。

2020年春から始まったCovid-19のパンデミックにより、国内外問わずイベントの開催は大きく制限されておりオンラインでの開催が増加しています。海外の主催者サイトを見ても、Virtual、Online、Streamingといった表現が多く見られますが、昨年後半より増えてきたのがハイブリッド開催です。
昨年9月に開催されたIFAを始めとして、展示会とカンファレンスが同時開催されるイベントにおいて、展示会部分をオフライン実施するハイブリッドだったりするケースが多いようです。

Hybrid、Omnichannelなど様々な表現をしてますが、なかには“Goes Fully Hybrid ”という表現があって、一体何をやるのか分からないようなものもあります。
正直なところ、いまだに世界のイベント業界にはパニックが続いていて、昨年の開催見送りに引き続いて今年の予定が確定出来ないなど、イベントが実施できない主催者も多く、それらのイベントで新製品やサービスを発表する予定だった企業にも大きな影響を与えています。


なぜハイブリッド開催が必要なのか?

イベントのデジタルトランスフォーメーションや感染症リスク軽減を考えると、最終的にはフル・オンラインということになるのですが、なぜハイブリッド開催(=オフラインとの併催)という選択なのかを考えてみましょう。

実際にハイブリッド開催が多いのは、展示会とカンファレンスが同時開催されるイベントだと思います。
ハイブリッド開催の理由を考えてみると・・・・・

・ネットワーキング重視 
In-person(対面型)によるネットワーキングを重視しているという点です。一方的に視聴するだけで良い内容であればオンライン参加で問題が無いわけで、その方が時間/コストともに有利です。しかし実際に現地に行って収集できる情報は多く、やはりオフライン開催のメリットは捨てがたいので、このバリューを重視している主催者/参加者は少なくないでしょう。
ネットワーキング要素は、いかなるネットワーキングプラットフォームを用意しても現時点でオフラインには敵わないのは事実です。実際に、ネットワーキングが出来ないのでオンライン開催ではなく、翌年に開催を見送ったという主催者も存在します。


・有効な展示会ソリューションの不在 

展示については、オンラインで効果をだすことが現状困難だということが大きいでしょう。
今年1月のCESが完全オンラインで開催されましたが、カンファレンスはともかく、残念ながら展示会については、参加者にいつものような体験を提供するには至らなかったようです。様々なテクノロジーで展示会体験を提供していますが、物理的に会場にいるときの視野角の広さや、触覚、嗅覚、味覚といった感覚を表現するには不十分で、やはりこの点についてはオフラインでの開催には及ばないようです。


・収益性の課題 

前提としてオフライン開催でもオンライン開催(またはハイブリッド)でも収益の確保は必要です。仮に収益の見通しが立つのであれば、主催者としてはオン/オフラインにこだわる必要性はないのではないでしょうか。
しかし日本国内の場合は、展示会収益に依存するイベントが多く、有料カンファレンスの成功事例は多くないのが現状です。現時点での有効な展示会ソリューションの不在により、展示会収益が減少するようであれば、オフライン要素を残すことが必要となってきます。


海外動向にみる、オンラインとハイブリッドの境目

日頃海外のイベントの開催状況をチェックしていますが、一部のカンファレンスイベントでは、すでに2021年の秋以降の開催についてオンライン開催を発表しているものもあります。

一例として、ニューヨークで開催される DeveloperWeek New York は、早々に2022年開催のオンライン化を発表しています。
このイベントは、元々3,000人規模のカンファレンスで参加費用は700~1100ドルくらい。オンラインでの料金体系は分かりませんが、このカンファレンス収入に展示会収入を足してそこから会場費運営費等を引いた上で同様の利益を出せるのであればビジネス的には問題ないかもしれません。

それに対して2021年秋のオンライン開催を発表していた LA Blockchain Summit は、いつの間にかオフライン参加1000名限定のハイブリッドに移行しています。
LA Blockchain Summitのハイブリッド化の理由については想像の域を出ませんが、上記の“ハイブリッド開催の理由”でも取り上げたように、In-Personのネットワーキング要素を担保することや収益性の問題からハイブリッド化(オフライン開催の追加)をした可能性はあります。

既にオンライン開催を発表しているDeveloperWeek New Yorkについても、仮にオンライン開催での利益確保が難しいようであれば、今後LA Blockchain Summitのようにハイブリッド(またはオフライン)への移行は十分考えられます。
パンデミック発生後のグローバルイベントの日程変更、キャンセル、オンライン化の動きを見る限りは、現実的にオンライン開催にコミットしている主催者は多くないようにも思われます。そのため感染症対策が進むにつれ、オンラインからオフラインへの回帰が起きる可能性はあると考えています。

ただし、今回パンデミックへの対応から学んだオンライン要素の取り込みについては、オプションとして増えていくと思われ、結果としてハイブリッド開催は増えていくでしょう。


大手ソリューションベンダーイベントのオンライン移行の影響

ちょっとおもしろいのは、セールスフォースやオラクル、グーグルといった最大手ベンダーの動向です。
ここ数年、大手のテクノロジーベンダーが自社イベントを開催し、イベント専門事業者のシェアを圧迫しています。元々大規模なユーザーベースを獲得しているベンダーは集客コストも少なく、マーケティングの観点からは優位に立っています。

そもそも利益を上げることが目的の開催ではなく、自社サービスのマーケティングが目的。運営も自社スタッフが中心の低運営コスト、さらにパートナー企業をスポンサーとして集め収益を確保するなど、様々な優位性を持っています。この傾向はマーケティング系のイベントに多く、専業の主催者を圧迫していました。
ところが、今回のCovid-19のパンデミックにより、大手ソリューションベンダーによる自社イベントが一斉にオンラインフォーマットに移行し、2021年以降についても積極的にオンラインフォーマットを推奨する傾向があります。これにより再び専業主催者によるイベント(特に展示会)に注目が集まる可能性があります。


オンラインとハイブリッドの台頭によって起きること

オンラインイベントとそれを利用したハイブリッド開催、この流れによってイベント業界は様々な変化を迎える可能性があります。主に海外の事例がベースとなりますが、いくつかの可能性を考えてみました。

・イベントの収益構造の変化 
有料カンファレンスが成立しているということが前提となりますが、イベントの収益構造が変わる可能性があります。
2021年のLA Blockchain Summitの例でみると、オフラインの参加枠が1,000名@499ドル、オンラインは無料です。元アップルのスティーブ・ウォズニアックを始めとして暗号通貨業界のビジョナリーが多く登壇するカンファレンスなので、これがオンラインとはいえ無料というのは失策のような気もします。仮に感染症の問題が続きオフラインでの受け入れが出来ない場合、主催者は無料での参加を約束しており、この場合カンファレンス収益はゼロになります。

理想的な形としては、低額であってもオンライン参加者にも課金することが、健全な収益の確保とカンファレンスの価値向上に繋がります。
収益性の面から理想的な形を考えると、1,000名のオフライン枠は登壇者や他の参加者とのネットワーキングが可能なプレミアム枠として高額に、オンラインは金額を抑えながらも席数に縛られない集客を目指すべきだと考えます。

仮にですが、オフラインは1,000名@1,000ドル、オンラインは5万人*@75ドルとして考えれば、仮にオフライン実施が不可能な場合でも、(カンファレンス枠をフルに販売した場合)375万ドルのカンファレンス収益となり、現状のプランより収益を上げることが可能です。(*注釈:5万人は主催者が公開している想定オンライン参加者数)
オンライン化による物理的制限の撤廃(カンファレンス会場が不要)は、カンファレンス事業の収益構造に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。


・展示会収益依存型イベントはハイブリッド開催へ 

業界のDXという観点からはフルオンライン開催が理想ですが、展示会依存型のイベントについては、現時点での展示会のオンライン化は出展企業の減少に結びつくリスクを抱えており、オンラインカンファレンスの収益化が出来ない限りは完全なオンラインへの移行が難しいでしょう。そのためハイブリッドでの開催が主流になりそうです。日本の主要なイベントは展示会収益依存型のモデルなので、このハイブリッド開催が主流になると予想されます。

今後、オンラインでのイベント開催は増えていくと思いますが、理想の展示会ソリューションの開発には長い時間が掛かると思います。


・提供価値の低いイベントの淘汰 

これはワーストシナリオですが、仮に今後感染症問題が改善せずオフラインでのイベントが実施不可能な場合の仮説を立てると、展示会収益依存型のイベントは大きな打撃を受けることになるかもしれません。
現時点で有効な展示会ソリューションが無いなかで企業がオンライン展示会への出展を控えた場合、有料での配信に耐えるカンファレンスプログラムを持たない主催者は収益を失い淘汰されてしまう可能性があります。

オンラインにおいては物理的なロケーションという概念がなくなり、いままで比較対象とならなかったものが比較検討対象となります。純粋にコンテンツのクオリティというモノサシだけで参加の価値判断がされる可能性があります。


ハイブリッドイベントにおけるオフラインの価値

デジタルトランスフォーメーションが叫ばれる今日であっても、世の中のすべてが100%デジタルになることは無いのではないでしょうか?

ビジネスを上流と下流で考えた場合に、下流にある消費者の手に届くラストワンマイルまではデジタル化が浸透していくのは明白です。一般的な消費財の購買行動を見ても、モノの購買から配達までデジタル化が浸透するのは時間の問題です。しかし、その上流においては、まだまだ人の手が介在する部分は残されており、製品の開発やマーチャンダイジングはデジタル化されていません。この上流工程がフルデジタル化されるということは、人間が人工知能の支配下に置かれることと変わりません。

普段私達が関わっているB2Bのイベントも、その一例です。上流にあるビジネスイベントを通じて私達は選択をし、その選択が下流の流れを決めていくのです。
そしてB2Bイベントにオフラインで参加する時のセレンディピティやネットワーキングは私達のビジネスに重要な価値であると考えています。

今日の感染症対策は人類にとっての最重要課題である反面、経済活動を停滞させてしまうのも事実です。不要不急のB2C分野においては、ある程度の制限はやむを得ないと思います。
しかしB2Bは必要緊急の課題です。大人数の集会を制限する目的でむやみに展示会開催を制限するのではなく、できる限りの対策をした上でのイベント実施が私たちの経済活動の維持にとって重要だと思います。

取るべきリスクと避けるべきリスクを分別を持って考えることが経済の維持には最重要なのではないでしょうか?

イベントグローブでは、日本の企業の皆さんに世界で開催されるB2Bイベントを紹介しています。現在3,000を超える海外のB2Bイベントを紹介しており、日本語で提供される海外イベントカレンダーとしては世界最大規模となりました。まだ日本の皆さんが気づいていないビジネス機会を提供できればと考えています。イベントの紹介に限らず、事前調査や現地サポートまで、様々なサービスを提供していますので、ぜひサイトをご覧ください。